利用者さんとどんな風に話せばいいのかわからない…
対人援助職として働き始めると、こんな風に悩みますよね。
対人援助職として働くうえで、コミュニケーションにはコツがあります。
これから、対人援助職のコミュニケーションのコツについて詳しく説明していきますね。
棚田(たなだ)なたのプロフィール
- 社会福祉士・精神保健福祉士ダブル受験一発合格
- 社会福祉士として公務員から民間企業に転職経験アリ
- 現在は放デイで児童指導員として勤務
コミュニケーションのコツ:メッセージを共有する
私たちは「コミュニケーション (communication)」という英語を、そのまま日常会話の中で使っています。
コミュニケーションという言葉を「やり取り」や「連絡」といった意味で使うことが多いですよね。
英語においてはとにかく物体や生物の間で何かを伝えて共有することをコミュニケーションと言います。
コミュニケーションとは、物・金銭・情報などの提供や交換、保護や攻撃、結婚など、人対人や集団対集団、社会対社会の働きかけを指します。
共有することの難しさ
現場において、上手くコミュニケーションが取れず問題になることがあります。
送り手と受け手との間でどの程度情報共有されているかは、対人援助を円滑に進めるうえで重要な問題です。
情報共有する上でのコミュニケーションの難しさの原因として、言語体系の問題があります。
例えば、送り手が「垂線を引いて下さい」とメッセージを伝えたところで、垂線の意味を知らない受け手には意味が伝わらないのです。
医療や福祉の現場でも援助者が日常的に使っている専門用語が、利用者に理解されないことがあります。
また、送り手が一方的にメッセージを伝えて、受け手に確認を取らないこともあります。
受け手によってメッセージの受け取り方に違いが出ることもあるのです。
同じ方法、同じ内容を伝えたとしても、受け手に正確に情報が届く訳ではないんです。
メッセージを正確に共有するため、送り手は曖昧な表現を避け、受け手に分かるような言葉で具体的に詳しく伝える必要があります。
送り手はメッセージを伝えた後に、受け手にどのように伝わったかを確認しなければいけません。
そのためには送り手から受け手への単方向ではなく、受け手の質問にも答える双方向のやり取りが欠かせないのです。
コミュニケーションの影響
コミュニケーションはお互いに影響を与え合います。
やり取りを通して、認知・感情・思考・行動などに影響を及ぼすのです。
コミュニケーションが、ずさんになることで援助が成立しない可能性もあります。
コミュニケーションの効果について詳しく解説していきますね。
挨拶の効果
例えば、援助者と利用者が出会った時に「こんにちは」と挨拶をしますよね。
挨拶で重要なのは、挨拶の言葉が利用者にどのような影響を与えるのかということです。
援助者からの挨拶は、利用者の存在を認め、好意的に関わろうとする意志表示です。
そのため利用者も援助者に対して好感を抱き、サービスを安心して利用できます。
挨拶は出会いの瞬間だけではなく、「さようなら」という別れの挨拶や、「行ってらっしゃい」という生活の節目での挨拶も、利用者に対する承認や好意を表していますよ。
対人サービスと敬語
対人サービスの分野では敬語を使いこなす人がいます。
敬語は相手に尊敬の気持ちを伝える手段です。
尊敬の気持ちを伝えることで、気持ちよくサービスを利用して貰えますね!
医療や福祉の専門家は専門的・技術的職業に分類されますが、業種としてはサービス業に当てはまります。
サービス業だと考えると、利用者への敬語は自然ですね。
「距離を置い感じるからやめて欲しい」と言う利用者にまで「職場の規則ですから」と、無理に敬語を使い続ける必要も無いでしょう。
ですが、利用者が援助者に敬意を払い、敬語で接しているのに、援助者が利用者に敬語を使わずに普通語で対応するのも違いますね。
コミュニケーションにおいて、敬語と普通語を使いこなすことは重要です。
敬語の種類
敬語には、三つの表現方法があります。これから詳しく説明していきます。
尊敬語
尊敬語は相手への尊敬の気持ちを表します。
尊敬語は相手の行為を「なさる」「おっしゃる」「いらっしゃる」などと表現したり、相手に関する事柄に「お」(お名前・お宅)や「ご」(ご両親・ご親切)を加えたり、相手の名前に「様」を付けます。
謙譲語
謙譲語は自分を低めて、相手への尊敬の気持ちを表します。
謙譲語は自分の行為を「致す」「申す」「参る」表現したり、自分に関する事柄に「拙」(拙者・拙作)や「弊」(弊宅・弊社)を付けますね。
丁寧語
丁寧語は相手に対して丁寧な言葉づかいをすることで、相手に対する尊敬の気持ちを表します。
「〜です」「~ます」と表現することが多いですが「〜でございます」と表現すれば、より一層丁寧になります。
その他
その他に美化語があります。上品な表現をすることで相手に対する尊敬の気持ちを表します。
例えば、尊敬語としてではなく「お金」「ご飯」などと表現することを指します。
利用者満足
対人援助職の分野において、利用者満足という言葉が度々登場します。
利用者満足は、サービスの利用を通して利用者が抱く満足感のことです。
サービスの利用や継続を大きく左右する重大な要素となります。
元々はビジネスで使われてきた願客満足(customer satiostaction) という言葉であり、医療の領域では患者満足という言葉で使われています。
利用者に対する敬語の使用も利用者満足を高めるためです。
ところか、どれだけ敬語を使いこなしていても、利用者に満足して貰えないことがあります。
言楽使いは丁寧でも、利用者を不快にさせることがあるのです。
利用者に満足してもらうためには、敬語の他に何が必要なのでしょうか。
利用者に嫌われる言葉
まずは、利用者に嫌われる言葉から解説していきます。
最初にあげられるのは援助者本位の言葉です。
利用者の利益よりも、援助者の都合を優先する言葉が嫌われます。
- 朝に「早起きして…もっと寝てればいいのに」
- 着替え介助時に「早く脱いでよ」
- 食事介助時の「早く食べて!」
- 消灯時の「勝手に出歩かないで。大人しくしてて」
援助者の都合を優先すると「こうしなさい」「ああしなさい」という指示的な言葉も多くなりがちです。
例えば消灯時の「勝手に出歩かないで。大人しくしてて」は、勝手に出歩かれると夜勤の仕事が増えるので「大人しくしてて」と指示しているのです。
体位変換時の「こっち向いて」という言葉も命令調に聞こえることがあります。
「こっち」「あっち」という表現が、援助者を基準にした言葉だからでしょう。
援助者が「こっち」「あっち」と言っても、視力の低い利用者にはどの方向が「こっち」か分かりません。
援助者を基準にするのではなく、利用者を基準にして言葉を選びましょう。
例えば「今度は窓の方を見ましょう」とか「廊下の方を向きましょう」など具体的な説明がいいですね。
入浴介助時の「重い…よっこいしょ」などです。
「重い」のは体重のことであり、本人を否定しているつもりはなくても、入浴介助という状況のなかで、利用者を「重い」というのは利用者を否定的に捉えていることに繋がります。
上手な敬語を使っても、メッセージが援助者本位であったり、指示的・命令的であったり、利用者に対して否定的であれば、不満を持たれても仕方がないですね。
利用者に喜ばれる言葉
利用者に嫌われる言葉があれば、逆に喜ばれる言葉もあります。
利用者に喜ばれるのは、利用者本位の言葉です。
- 食事介助時の「ゆっくり召し上がって下さい」
- 廊下で会った時の「何かご用はないですか?」
- 消灯時の「用があるときはナースコールを鳴らしてくださいね」
利用者に配慮した言葉が喜ばれます。
- 入浴介助時の「湯加減はどうですか?」
- 体位交換時の「枕はこれでいいですか?」
細かい点まで気にする心くばりの言葉も喜んでもらえますよ。
- 起床時の「よく眠れましたか?」
- 排泄時の「おなかの調子はどうですか?」
相手の都合を考えた気遣いの言葉も素敵ですね。
褒めるのも効果的
嫌味やお世辞でもない限り、褒められると嬉しくなりますよね。
服装やお化粧について「とても素敵ですね」と相手を肯定するような誉め言葉も喜んでもらえます。
利用者に満足してもらうためには、敬語を使いこなすだけではなく、利用者本位に関わることが大切です。
利用者の利益を優先し、心くばりや気遣い、利用者を肯定的に評価することが利用者満足に繋がります。
アドラー心理学に触れる【質の高い支援のために】
アドラー心理学を学ぶことで、更に質の高い支援を提供できます。
- 自分の感情をコントロールできる
- 自己受容と自己肯定感が上がり、自信が持てるようになる
- 相談者や職場内の人間関係が改善され、対人関係がスムーズになる
人間関係やスキルアップに悩んでいる人には、特にオススメ!
自分自身が成長するための一歩を踏み出せますよ。
おわりに
今回の記事では、対人援助職のコミュニケーションのコツについて詳しく説明していきました。
援助者の都合を押し付けたコミュニケーションでは、利用者を不快にしてしまいます。
利用者ファーストを意識することで、質の高い支援を提供できるようになります。
「利用者と上手く関係を築けない」と悩んでいる時は、利用者満足を意識してみてくださいね。
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